悼念李前総統登輝先生逝世

この度の李登輝先生の御逝去に対し深く哀悼の意を表します。先生は日台の友好に多大な寄与をされたのみならず、日本の文化と日本精神に対して深い理解を持たれていました。私事ですが十数年前、台湾淡水にて先生の講話をお聞きしました。その折先生は窓からみえる観音山を指して、「昔あの山に登ったことがありますが、その頂上は大変せまい所で少数の人しかいられません。私も台湾総統の立場にあった時は、あの頂上にいた様なものでした。トップにいる者は必ず自分より上のものを持っていなければなりません。神、仏、天、何であれそれがなければ権力を持つ者は道を誤ります。」大体この様な主旨でした。他にもいろいろ御聞きしましたが、このお話は今も私の心に深く残っています。先生は深い信仰をもつクリスチャンでした。宗教の枠をこえて、よき事をなすことは大切なことです。先生の成し遂げた民主化された台湾は今コロナ禍の世界のなかでひときわ輝いています。現代の哲人政治家、それのみならず広い見識と公正な見解、人々のためになろうと公のために生きる在り方。先生の志の高さ、先生の御功績を讃え深く御冥福お祈りいたします。

                  日本国 日光修験道山王院

                    法頭 伊矢野 慈峰